ごあいさつ
憲法29条3項には「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」と定めてあります。
その理念に基づいて、公共事業の実施にあたっては、事業用地の確保(買収)のため、特別な犠牲(損失)を被ることとなる権利者に対して 「損失の補償」が行われる制度が設けてあります。
(損失補償制度:公共の利益と私有財産の利害調整制度)
公共事業のための用地買収に伴う補償は周知の通り 「損失補償基準」をガイドラインとしております。これは過去数十年に亘る在野の先人の努力の賜物であり、こうした統一基準を持たずに移転補償交渉が行なわれていた時代を考えると大きな進歩といえます。
しかし、その損失規準要綱だけでは補償の算定ができるはずもなく、また、現行の細則算定要領規準も「もうこれで十分である」という域までにはまだ参りません。
「損失の補償」の実務では補償事案の具体的な算定段階(事実の認識や基準の解釈・選択範囲)における考え方いかんで補償額が大きく変わってきます。
換言すれば、補償する側の視点で考えるか、補償される側(権利者)の視点で考えるかによって、補償の理論や算定方法は大きく変わり得ることとなります。
その意味では、当事者双方がそれぞれの視点から「損失基準要綱を踏襲した技術的に対等の立場」での主張を可能な限り積極的に交換し合う協議努力の中から結論を導き出すことによって、はじめて「正当な補償」が生み出されるといえるのではないでしょうか。
経営責任の一層の明確化や情報公開が要求される時代でありながら、わが国ではまだ権利者側において「補償」される仕組みや算定方法が妥当なものかどうかを判断したり、被補償者の立場に立って専門的な知識を補い、その利益を擁護するための「行政側から独立した」社会制度は残念ながら確立されておりません。
当社は各分野の専門家が集り、過去の数多くの補償協議の体験から、移転を余儀なくされる権利者の立場に立った補償理念とは、単なる財産価値の復元のみでは不十分であり財産と直接関わる「生活や営業状態の再建・回復」こそが最も重要であるとの認識に基づいて業務を進め、その分野のパイオニヤたるべく研究・努力を重ねながら、具体的な成果を収めてまいりました。
今後も、予期せぬ公共事業の施行により、自らの生活・経営設計にかかわらず従前基盤の変更を迫られる皆様の立場に立ち「より良い補償」を実現することの可能性を追及し「損失補償のエキスパート」として実効性のある相談体制の充実をはかり、権利者(被補償者)の皆様が気軽に相談できる補償問題の専門コンサルタント機関でありたいと願っております。